愚者
「大丈夫?」
何があったのか分からない侭に女生徒が声を掛けて来る。葵は涙を堪え乍頷きトイレの外に出る。全身が震えで止まらないのは寒さだけではない。人間の心の醜さ。酷さに身体の本能が打ち震える。呆然と意識が遠のく中、背後に気配を感じて振り返ると、保険医の女性が狼狽した表情で葵に近付いて来る。
「どうしたの?」
「あの……」
「その侭だと風邪を引くから保健室にいらっしゃい」
保険医は葵の手を引いて保健室へと連れて行く。
「さあ、これで身体を拭いて」
保険医がバスタオルを手渡し、ベッドの在る場所を静かに指差し、葵はベッドの在る場所へと行くとカーテンをソッと引き、制服を脱ぎ身体に被された水分を拭き取る。保険医は何も云わず制服を手に取りストーブの前に持って行くと丁寧に乾かしてくれる。
「服が乾く迄、ベッドの中に入ってなさい」
カーテン越しに優しく声を掛けて来る保険医に、葵は「有難う御座います」と云いベッドに潜り込む。身体は寒さでカタカタと震えるが、それは冷水を浴びせられた寒さだけでは無く、酷い仕打ちを受けている現状が、本能が恐怖の余りに打ち震えるのだ。
何があったのか分からない侭に女生徒が声を掛けて来る。葵は涙を堪え乍頷きトイレの外に出る。全身が震えで止まらないのは寒さだけではない。人間の心の醜さ。酷さに身体の本能が打ち震える。呆然と意識が遠のく中、背後に気配を感じて振り返ると、保険医の女性が狼狽した表情で葵に近付いて来る。
「どうしたの?」
「あの……」
「その侭だと風邪を引くから保健室にいらっしゃい」
保険医は葵の手を引いて保健室へと連れて行く。
「さあ、これで身体を拭いて」
保険医がバスタオルを手渡し、ベッドの在る場所を静かに指差し、葵はベッドの在る場所へと行くとカーテンをソッと引き、制服を脱ぎ身体に被された水分を拭き取る。保険医は何も云わず制服を手に取りストーブの前に持って行くと丁寧に乾かしてくれる。
「服が乾く迄、ベッドの中に入ってなさい」
カーテン越しに優しく声を掛けて来る保険医に、葵は「有難う御座います」と云いベッドに潜り込む。身体は寒さでカタカタと震えるが、それは冷水を浴びせられた寒さだけでは無く、酷い仕打ちを受けている現状が、本能が恐怖の余りに打ち震えるのだ。