愚者
「悪いな。色々と愚痴を聞いて貰って」
「構わないさ」
「ほな、ワシはそろそろ行くわ」
 関がスツールから立ち上がり財布から金を取り出そうとしたが、私は静かに首を振る。
「どうしたんや?」
「貸しにして置こう」
「何んでや?」
「この案件が無事に終わった時に払ってくれたら良い」
「大変な借りやな」
 関が曖昧な笑みを浮かべて頭をポリポリと掻く。
「生き残って、気楽に飲める状態に成れば良いさ」
「……ほな、甘えさせて貰うかな」
 関が軽く手を上げて立ち去る姿に、私は索莫とした思いを抱き乍、関が使ったカップをシンクに入れて洗い出す。
 綺麗に洗い上げられるカップ。このカップの様に、関が抱えている問題も解決して欲しい物だ。私は視界から遠のく関の背中を見乍、友の無事を心から祈った。

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