愚者
コンクリートで出来た壁に背を預け空を仰ぐ。肌寒い風が、葵が座っている場所を吹き抜け髪の毛がふわりと風に靡き、優しく手で抑えて視線を走らせると、遠くにキラリと光る物が見えた。
―何?
 葵が眼を凝らすと、遠くに居るのが男性だと朧に見え、更に眼を凝らす。何か手に機械の様な物が見える。数秒程見詰め合うと云う格好に成り、男は葵が見ているのを察知してその場を素早く立ち去る中、葵は男の持っていた物に気が付く。望遠の付いたカメラだ。何故と云う疑問以上に、本能が自分を狙っていると告げ、盗撮と云う言葉が頭を過ぎる。何かの意志に従い自分が狙われているのかも知れ無いと葵は漠然と覚り身震いをする。自分の知らない所で何かが動いている。別段自分は芸能人でも無ければ悪さをした犯罪者でも無いのに誰かに付け狙われている。不気味な恐怖が言葉を失わせ、壁に背を預けた状態で動く事が出来無い。
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