愚者
 教室に寝そべり天井を見上げて、ゆっくりとした動きで起き上がる。制服には埃と汚れが付着しボロボロに成っている。葵は置かれている状況を冷静に振り返るが、最早神も仏も無いと云える程に酷い状況へと成っている。複雑な感情が交錯する。神頼みをしても仕方が無いと、イヤと云う程に肌で感じ乍も小夜子の容態が良く成る事を神に祈る。矛盾しているのは分かっている、だが、何かに縋らなければ、精神的に保つ事が難しい事は自明の理だ。視界が歪む中、葵は立ち上がり自分の机に行くと、力の入らない手で鞄を持ち、只一つの安息の地で在るマスターの顔を見る為に、トボトボと教室を後にした。

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