愚者
「詰め将棋と同じ状態だね」
 互いに逡巡する。打開策を考えるとしても、ざっと考えるだけで色々な弊害が出て来る。素手では無論限界は有るし、暴力的な力以外にも権力と云う化け物が一番厄介だ。コイツを相手にした場合、通常の計りを越えた狂気が働く。しかも、自分達の都合の良い方向に社会の情報自体を操作する恐れがある。そう成ると、まさに手も足も出ない状態に成る。
「和さんが掴んでいる情報はどんな物なんだい?」
「現在分かっとるのは、ゲームマスターと云うか、胴元が誰かと云う事位やな。このゲームの参加者迄調べ上げる矢先に、この体たらくや」
「胴元?」
「せや。コイツらの方法って云うか、ワシが集めた情報やと、不定期にゲームを開催する見たいなんやけど、その際にはチンチロ見たいな感じで、誰か一人がルールを作って参加者を募って遊ぶらしいんや」
「胸糞の悪い話だ」
「せやな。その上でワシが引き抜きの依頼を受けた人材と、今回のゲームマスターが略間違い無く同一人物と云う事迄は手繰り寄せたんやけどな」
「それで、探り過ぎたが為に手痛いしっぺ返しを受けたって事だね?」
「相手はかなり厄介や。聞けば誰でも知っとる会社の役員なんや」
「何て会社だい?」
「コイツを聞くと云う事は、ワシと同じステージに立つ事を意味するんやで」
「構わないさ。この侭放って置く気も無いし、過去の贖罪の意味も込めて、その巫山戯た輩に一矢報いたいね」
「せやけど、時雨の場合は……」
「分かっている。刑事的には無罪方面でも、民事が残っているって云いたいんだろう?」
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