愚者
「改まってなんや?」
「葵を、元の状態に戻す事は出来無いかな?」
「元の状態ってのがワシには分からんけど、どうしたいんや」
「見て貰った通りの放心状態と云うか、心の中は完全に砕け散ってる見たいなんだ」
「砕け散っとる?」
 関が困惑した表情を浮かべて質問して来る。そこで、私は小夜子の事故を踏まえた全てを関に話して聞かせる。多感な時期での複雑な事件と事故の両方からの心理的圧力は、普通の大人でも耐える事は難しい。それを踏まえて葵は孤軍奮闘したが、結果として心が砕け散ってしまった。関は、私の話を聞いている間に、徐々に不機嫌な顔に成って行く。
「確かに酷い話やな。やり過ぎの領域を越えとるとしか云えんわ」
「必要性の無いゲームから来る圧力の上に、只一人の理解者で在る小夜子君が怪我をして意識不明の状態なんだ。それでも葵は負けたくないと云う信念で頑張ったが、手練手管の相手が仕掛けた罠の為にこの状態だ」
「酷い話やな……」
「眼に余る行為だよ。非道な事をした私が云うのも説得力が無いかも知れないけれどね」
< 253 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop