愚者
「時雨は十二分に贖罪を果したと思うで。確かに殺人は誉められた物でもあらへんし、普通に考えたら犯したらアカン領域を侵しとる。やけど、それを踏まえて人生を棒に振る形で十二分に罪を償ったと思う。本来逮捕されたら、裁判で色々な事を考慮して刑罰が決まるけど、刑務所で拘束って云うのは、ある意味ではヌルい選択肢とも云えるからな。時雨はそれ以上に辛い道を歩んだ。それで済んだと思う事や。綺麗に忘れる事は出来んかも知らんけど、気にする事は無いで。それに、過ちに気が付いたと云う事こそが一番大切や。刑務所に入っても改心出来んかったら全く意味無いし、再犯をする場合、刑務所の矯正自体失敗しとるからな」
「……そう云って貰えると、少しだけ救われた気がするよ」
「真実を云った迄や」
「それを踏まえてお願いだけれど、葵の心を元に戻せないないな?」
「時雨も知っとる通り、ワシの事務所の屋号は、自然・科学・心理学研究所やで。人間の心理も勿論扱っとるし、最近の世情では、ソッチ方面の依頼の方が多い位や」
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