愚者
 ガラス張りの概観と木製のカウンター。木目を生かした壁や天井には照明がぶら下がり、店内を薄っすらと照らし出している。カウンターのスツールが五脚と、等間隔に置かれた四人掛けのテーブルが六つ。決して広くは無いが手狭と云う訳でも無く、程々な広さの喫茶店兼バー。昼の十四時前後から開店をし、夕方に一旦閉め夜にはバーへと変貌する。二階の住居は1LDKの広さで、独身の私には十二分な広さだ。私はカウンターの中で無頼派を取り出し、グラスに氷を放り込みオン・ザ・ロックスを作る。毎週日曜日は定休日にしているが、絶対に休むと云う訳でも無い。気分次第では休みが無しの時もある。今日は元々休む積りだったが、久し振りに訪れる友人の為に店を開けているだけで、開店をしていると云う意思は無い。一見の客が入って来た時は、その場に応じて対応すれば良いだけだが、別に投げ遣りと云う訳では無い。只、流れに身を委ねているだけだ。今日訪れる友人も偶然知り合っただけで、餓鬼の頃からの旧知の仲と云う程では無い。偶然に身を委ねる生き方。それが私の人生観に有るのかも知れない。頭で考え抜いた生き方等、一回の偶然で引っ繰り返る事は人生に置いては多々有る事だ。下手な青写真等は糞の役にも立たない。
< 3 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop