愚者
 シャガれた声が会議室に響き渡る。歌を歌う様なリズムで初老の男は喋り出す。
「ワシ等は、金でゴチャゴチャは云わん。寧ろプロセスじゃ。人間の心が壊れる過程。これこそが最高のショーじゃ」
「確かに仰る通りです」
「もっと痺れる快感が欲しいんじゃ。お前さんの手腕を楽しみにしとるぞ」
 初老の男が会話を切り上げると全員が頷き立ち上がる。恐らくこの初老の男が集まりの首謀者なのだろう。人間が壊れる姿が最高のショーだと云い切る辺りが、常人の思考の範疇を超えている。狂人の集まり。その言葉が一番適しているだろう。男達は、一つの意思で有る「心の壊れるショー」に金を賭ける事でしか、もう人生を生きている実感を得る事が出来無い犯罪者集団の集まりだ。決して得る事の出来ぬ快楽を求め彷徨う無法者達。群れの長が去るのを切欠に、全員がその場を後にした。

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