泡沫
二人の出会い
市立南条中学校。
4月5日、始業式の今日。
クラス表の張り出された体育館の前には、自分のクラスを見ようとする生徒で人だかりができていた。

「2年4組…かぁ。」
とつぶやく少女。
華奢だけど、女の子らしいラインを描いた体躯。腰近くまで伸びた漆黒のストレートヘア。大きな瞳。自分で言うのもなんだけど、まぁ、いわゆる美少女ってやつ。
私の名前は、雨宮ひなので、この物語の主人公。

「ひな!おはよー!!何組だったぁ?」

静かだった私の脳内をぶち壊し、一気ににぎやかにしたのは親友である、井沢利香。
少しやせ気味で、スレンダーな体つき。肩より少し長めのカールした髪。元気そうな光を宿した瞳。
私とは正反対ともいえる外見の、こちらもまた美少女。

「利香!おはよ~!4組だったよ!!」
たわいもない話をしながらも、教室へ向かう。
「でもさー…。これでひなとあたしが同じクラスになったのって、何回目だっけぇ?」
「んーと…ねぇ。初めて一緒になったのが小4の時だからぁ。五回目。」
「しかも全部連続だもんね~!これって運命!?きゃははっ!」
ふざけながら利香が抱きついてくる。
若干百合趣味だから怖いんだよ、利香は。いつ本気で襲われるか気が気じゃないって。
ほっぺにキスしようとしてくる利香を軽くあしらいながら教室の扉をあける。

目の前にいたのは――――――美少年だった。

あまり男子のことに興味はなかった。
女子特有の、あの子がカッコいい、とか、あの子が優しい、とか、あの子はダメ、とか。
そういうのが嫌いだった。
そして、アイテム感覚の『好きな人』。あれが一番大嫌い。
自分の好きな人を他の誰かが好きと知ると、
「わたしのほうが先に好きって言ってたんだよ!」
「そうだったの?ごめんね、わたしはほかの人にするから!」
なんてやり取り、日常茶飯事。
だから、恋愛も、ある人を除いて――――――したことが無かった。
そしてそのある人に裏切られて…私はもっと恋愛に、男子に、興味を持たなくなった。

ハズだったのに。
一瞬で吸い込まれてしまいそうだった。その子の魅力に。
明るい栗色をしたクセッ毛。優しい色をしたまつ毛の長い瞳。
おとぎ話に出てくる王子様みたいだった。
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