愛恋
「皆本当に卒業おめでとね」
先生も少し涙を堪えていた。
まぁ、無理もないんだろうな。
高橋先生は今年から、この南浜小学校を離れて、他の学校に移動することになったらしい。
そんな長年いたワケでもないんだけど、やっぱり思い入れのある学校だと思うし、自分が受け持った生徒たちの卒業を見ることができたのだから、哀しくなるのかなぁ、やっぱり。
HRはすぐ終わって、紅白饅頭を配られた。
「俺これ嫌いだし」
隣の席の男子がそう言っていた。
「ちょうだいよ」
ふざけて言ったらホントにくれた。
「ありがと」
少し嬉しかった。
恋愛感情は全く持ってなかったけど、何ていうのかな。
照れくさくて、何か切なくて、嬉しくてっていうのが変に混ざって複雑な気持ちになっていった。