ドラゴン・テイル

 結局、町を出るまでクレイグと会うことは無かった。

 町の門で一度立ち止まり、振り返る。

 門の柱に、町の名前が刻印されているのが目に止まった。

 ─魔法都市『ザイル』。

 ウルが育った町の名前。

 昔は小さかったこの門も、町の発展に比例するように大きく、新しい物になった。

 反対側の柱を見てみる。
 同じ書体で、『ようこそ、竜の加護を受ける町へ』の文字。

 もう、町と言うよりも街と呼べるほど大きくなった。

 十年前までは民家の集落でしか無かった土地。今では様々な店が拠を構えている。

 少し前までなら、ただ苛立ちをぶつける対象でしか無かった場所を、今は愛おしいとさえ思えた。

 ウルは、静かに一礼して、背を向けた。

 名残惜しさが無かった訳ではない。

 クレイグにも一言残したかった。

 だが、一秒でも早くリムレットの無事を確かめたい。その気持ちの方が勝っていた。


 目の前に、延びる街道を中心に緑で覆われた草原が広がる遙か前方には、鬱蒼と深い森が見える。


 一歩一歩、確かめるように足を進めた。




 北へ。

 リムレットを取り戻す為に……。






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