ドラゴン・テイル

「誰か、いるのか?!」

 ウルの声が辺りに響く。

 だが、それに答えるのは風の音だけで、辺りには何の気配も生まれなかった。

 この松明は、間違いなく人間が焚いたものだ。

 ウルはそう確信していた。

 モンスターのほとんどは……少なくとも、この地帯に生息するモンスターのほとんどは火を恐れる。

 ザイルを襲撃した巨大なモンスタークラスならそう大して恐れないだろうが……そんなモンスターがこんな小さな松明に火を灯せる訳がない。そもそも、奴らに松明がわかるはずもない。

 ウルはしばらくの間、松明の周りをウロウロと歩き回った。

 松明を灯したのが人間ならば、何かメッセージが残されているかもしれない。

 松明が挿してある燭台を見る。特におかしな点は見あたらない。
 続いて燭台の下に目を向ける。短い雑草が生い茂っているだけで何も無い。

 もう一度、松明を見た。

 真っ赤な炎がゆらゆらと揺れている。

 そこで、ウルは違和感を覚えた。

 ─……何かがおかしい……。

 漠然とした違和感で特に何が変だと思うのか、自分でもよく分からないが、何かが違うのだ。

 ─……何だ…? 何がひっかかるんだ?

 自分に言い聞かせるように、松明を見つめながら思考を巡らせる。


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