ドラゴン・テイル

 建物は、ゆっくりと傾きながら逃げ惑う人々を覆うように影を落とす。

 人々の動きが更に激しさを増した。

「……っ………!」

 勢いよくぶつかってくる人の肘や膝が、容赦なくウルの体を痛めつけ、小さな呻きがウルの口から漏れた。

「ウルさんっ!」

「……黙ってろっ!」

 叱責するような強い口調で言うウルに、先の言葉を飲み込むレナ。


 ぎぎぎぎぎ……………


 石と石を力いっぱい押し付けて擦り合わせたような異音が響く。

「たっ倒れるぞーっ!!」

 誰かが上げた声に、はっと顔を上げる。


 ゆっくり傾く建物は、まるで地面に吸い寄せられるようにバランスを失っていく。

「キスティンっ!!!」

 レナの悲鳴に近い叫び声。


 キスティンは、呆然としたように迫り来る建物を見上げていた。

「いやぁぁぁっ! 逃げてっ! お願い! キスティーーン!」

 半狂乱に近い状態に陥り、キスティンの所に行こうとウルの腕の中でもがくレナを、ウルは力任せに押し止めた。

「離してっ! 離してくださいっ!」



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