ドラゴン・テイル

 クレイグ達の視界から見えなくなった頃、ウルは軽く溜息を付いた。

 ─野生の勘で生きてるような奴だからな……クレイグは変に思ったかもしれない。

 変な空気を醸し出している自覚のあるウル。

 ─女々しいな、俺。

 自嘲気味に少し笑うと、家には向かわずに魔専校舎へと足を向けた。

 さほど遠くはない校舎にはすぐたどり着いた。静まりかえったそこには、人の気配は感じられない。

 前日にあんな騒動があったのだ。しばらくの間、少なくとも町の修復の目処(めど)が立つまでは休講だろう。

 しばらく校舎の周りを歩き、一際大きな建物の前で足を止める。

 いつか、ウルが中を氷付けにした校舎だ。

 校舎の扉に手をかけた。鍵が掛けられていて開かない。

 ─当たり前か。

 特に何をするわけでも無い為、すぐに踵を返した。

 明日の準備をしなければ。

 振り返り……、その場に凍り付く。

 そこには、先ほどまでいなかったはずの人影があった。

 その人物は、ウルが気付くと同時に静かに歩み寄ってきた。

 すらりとした細い肢体。中性的だが、一瞬で人の目を引く美しさを備えた顔の女性。
銀糸のようなきめ細かい肩にかかるかかからないかの髪が風に靡(なび)いている。

 女性は、ウルの前まで来ると口を開いた。

「やはり、行くのか……?」

 何の事を言っているのか分からず、不思議な顔をして女性を見返すウルだったが、紫水晶のような瞳を見て、息をのんだ。

「ラーマ……なのか……?」

「誰だと思ったのだ?」

 女性、ラーマは少し悪戯っぽく笑った。

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