ドラゴン・テイル


「驚いた……と言うより、度肝を抜かれた気分だな」

 校舎から離れた公園。初めてキスティンと話した場所に、ウルとラーマは佇んでいた。

「ふふ……さすがにあの巨体で町中を歩く訳にもいかぬからな」

 クスクスと笑うラーマ。

「それよりも、やはり行くのか?」

 初めて人の姿をしたラーマが開口一番に言った言葉を再び投げかける。

「あぁ」

 短く答えるウルに、ラーマは呆れたように息を吐いた。

「まぁ、別に止めはせぬが」

 そう言うと、公園に設置してある滑り台の縁に腰をおろした。

「……」

「……」

 会話が続かず、沈黙する二人。

 旅に出る……リムレットを探す旅だが、アテがあるわけではない。迷いの森で一本の竹の子を探すようなものだ。

 すぐには戻れない。ひょっとしたら一生戻れないかもしれない。だが、覚悟はしている。

 ラーマは、じっとウルを見据えた。心の奥底まで見透かすような瞳。
 ウルは、目を逸らさずに見返した。

「決して、無理をするでないぞ」

 静かに、だがはっきりと。
 その一言だけ残すと、ラーマはゆっくりとした動作で立ち上がり公園を立ち去って行った。


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