シムーン
さりげなく真希の左手に手を伸ばすと、薬指にそれを通した。

「えっ?」

気づいた真希が、左手を自分の顔の前に出した。

「――これ…?」

驚いたのも、無理はない。

だって真希の左手にあるものは、
「ウソ、でしょ?」

薬指に光る、シンプルなシルバーのリングなのだから。

それは、夜景をバックに美しく輝いていた。

「ウソじゃなかったら、どうするの?」

驚いている真希に、俺は言った。

真希はリングを眺めて、戸惑いながらもどこか嬉しそうな表情を浮かべた。

「――俺と、結婚してください」

我ながら、簡単なセリフだ。

けど、今すぐに言わないといけないと思った。
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