シムーン
と言うか、
「あなた、何者?」

私は聞いた。

だって、知らない人だもん。

知らないはずなのに、初対面のはずなのに、何で私の介抱をしているの?

すると、男はピクリと形のいい眉を動かした。

えっ…私、何か変なことを言った?

そう思った時、彼の唇がこう言った。

「知らなくていい」

知らなくていい?

それは一体、どう言うことなんだろう?

よくわからない。

聞きたかったけど、出かかった言葉を飲み込んだ。

何だか、それ以上は聞いてはいけないような気がしたからだ。

甘い香りに包まれながら、私は思った。
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