シムーン
「――えっ…?」

その光景に、私の足が止まった。

目の前には、森藤勇がいた。

意外にも背が高いから、彼の姿はすぐにわかった。

けど、その人は誰なの?

彼の目の前にいる小柄な女の子は、彼に何かを渡した。

彼は彼女の手からそれを受け取った。

今、何を受け取ったの?

その子から何をもらったの?

その子は、誰なの?

聞きたいことはいっぱいあるけれど、何も言うことができない。

たくさん浮かぶ疑問に対して、自分は1つも口に出すことができない。

あなたは、誰なの?

あなたは、何者なの?

「おい!」

気がつけば、私はその場から逃げ出していた。
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