シムーン
たくさん走ったため、息をするのが苦しい。

それは、彼女も同じみたいだった。

何してんだろうな、俺たちは。

そう思っていたら、
「――あなた、何者なの…?」

彼女が呟くように言った。

「あなたは、誰なの…?」

乱れた呼吸の中で、彼女が言った。

「さっきの女の子も、あなたも一体誰なの?

ねえ、教えてよ」

グラリと、俺の中で何かが揺れた。

濡れた瞳で、彼女が俺を見つめている。

彼女の瞳が濡れているのは、泣いているのか何なのか。
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