アリィ
……と思ったら、まだ寝ていた。
しかも、出かける前と後で頭の位置が九十度くらい違う。
はたして夜の間には何回転していたのだろう。
そんなことはどうでもよくて、早く起きないと、宿題はまだまだ残っているのだ。
「アリィ、朝だよ。起きて」
直接触れないようにタオルケットを手に巻いて、肩を揺する。
「宿題しなきゃいけないでしょう」
「うぅー……」
起きたか?
「……ぷすぅ」
……寝ている。
「いい加減に起きろ!」
相手が寝ているのをいいことに、背中を蹴っ飛ばした。
生まれて初めて人を足蹴にした。
思い切りやればよかったものを、遠慮を捨て切れなかったあたり私も小心者である。
「ふわぁ……ゆっぴー、おはよう」
やっと起きたアリィは、何事もなかったかのように伸びをした。
蹴られたことには気づいていないようだ。
「もうそろそろこんにちは、だけどね」
内心ほっとしているのを隠しながら、嫌味をこぼした。