アリィ

「あのね、黒目を大きくするコンタクトレンズがあるんだよ」


「見せブラは、せっかく見せるんだからシンプルなのよりレースがたっぷりついてる方がいいと思うの」


「やっぱりゴールドメイクはブロンズ肌に映えるよね。今年の夏に焼いておけばよかった」


さも昔から知っていることのように話しているが、どうせ付け焼刃の知識。


ちょっと突っこんだ質問をすれば、きっと答えられなくて怒り出すのだろう。


しかし私にそういう方面の知識がまったくないものだから、突っこみようがなくて口惜しい。


下手をすれば「えー、ゆっぴーそんなことも知らないのぉ?」なんて鼻で笑われかねない。


だいたいアリィに言わせてみれば『ギャル』という呼び方さえ古いらしいのだ。


そんなこと言われたって私にしてみればそういうジャンルの人間は『ギャル』としか呼びようがないので改めるつもりはないが、

私の無知につけこんでさらに薄っぺらな知識を語り出しかねないアリィに、

私は三秒おきに「うん」「へえ」「そうなんだ」を繰り返してやり過ごすことにしていた。




アリィは、一度ハマると徹底してハマる性質だ。


自己紹介のときに好きだと公言していたとおり、持ち物はプリンセスグッズばかり。


教科書や絵の具セット、さらにはプリントの一枚一枚にまでプリンセスシールを貼りまくっている。


どこまでも情熱的……いや、病的なのだ。




嫌な予感がしていた。


アリィのことだから、お絵かきだけで済まされるはずがない。


以前『ギャル』であるカナエ達をしきりに羨んでいたこともあったし、もしかしたら……





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