アリィ

膝が痛いと引きずって。


股からも血を垂らして、命をつなぐ機能を正しく働かせている。


バカみたい。


未練がましく人間でい続けている自分は、ほんとにバカだ。




登校している大勢の生徒にまぎれて、ぽつぽつと歩く。


誰も私の存在になんか気づいてないみたいに通り過ぎて行く。


ここにいる中のたったひとりでさえ、私を必要としている人はいないんだ。


このまま、この喧騒にまぎれて消えてしまいたい。


まるで、初めからいなかったように。


指の先から透明な砂になって、さらさら流れて。


消えてしまいたい。……




「ゆっぴー!」




はっとして顔を上げた。


教室の前には、いつものようにぎゅうぎゅうにひっつめたポニーテールを揺らし、

細い目をますます細めて笑うアリィがいた。




「おはよ……って、あれ?ゆっぴーケガしてる!」


アリィが駆け寄ってきて、しゃがみこみ私の膝小僧の様子を確認する。


「うわぁ、痛そう!どうしてそんな平気な顔してるの?すごい血が出てるよ!」


不細工な顔をゆがませて、アリィのほうが痛そうな顔をしている。


アンタがケガをしたわけじゃないのに。


「ねえ、手当したほうがいいよ。保健室行こう!」


アリィは私の手を引いて走りだした。
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