アリィ
「ねえ、ゆっぴーいきなりどうしたの?」
「お腹が痛いの!だから一時間目は休むから!先生に言っといて!」
カーテンを引っぱって、アリィが入ってくるのを必死に阻止しながら叫ぶ。
「でも、まだ手当が……」
「いいから行って!」
たぶん、人前でこんなに感情を荒げたのは初めてだったと思う。
「ゆっぴー……」
小さなつぶやきを残して、アリィは保健室を出て行った。
ドアが閉まる音がしたのと同時に、私はベッドに突っ伏して声をあげて泣き出した。
昨日は一滴も出なかった涙が、面白いくらいにあふれてきて止まらない。
なぜだか分からない、とか、消毒液がしみたせい、とか、そういう言い逃れはもういい。
アリィがいた。
私には、アリィがいた。
たしかに私はアリィのことが大嫌いだった。
でも、どんなに自己中で、鈍感で、醜くても、私を見てくれていた。
それが今の私にとって、ただひとつの救いのように思えた。
私には、アリィがいる。
それだけで、今日を生きていける気がした。