アリィ
「次は消毒するね!えっと、消毒は……この白い綿の入ったビンのほう……だっけ?」
私なんかが、こんなちっぽけなケガをしただけなのに、こんなに一生懸命になって。
コイツもバカなんじゃないか。
「ごめんね、またしみるかも」
消毒液をたっぷり吸いこんだ白い綿で傷口をなぞられる。
胸の奥からせり上がってきたものが、喉につっかえて目尻に涙がにじむ。
こぶしに、これでもかって力をこめる。
肩が震える。
鼻がつんとする。
もう、ダメだ。
「あとはガーゼを当てて……」
「もういい!」
私は勢いよく立ちあがって、早足で休養用のベッドへ向かい、カーテンを閉め切った。
「え……ゆっぴー!?どうしたの?」
アリィが混乱してベッドへ駆け寄ってくる。
無理もない。
今の私は完全に挙動不審だ。
でも、そうするしかなかった。
滝のようにあふれてくる涙を隠すためには、そうするしかなかった。