アリィ

ホラー映画のような



きっと誰も待ち望んでなどいなかったであろう文化祭の日がやって来た。


午前中は、精神を不安定にする吹奏楽部の演奏と、さっさと記憶から削除してしまいたいほど痛々しい演劇の観賞会。


終わってから疲労のため息が出たのは言うまでもない。


さすがのアリィも、いつになく疲れた顔をしている。


「最悪。つまらなかったね」


私が言うと、「そうだね」と力ない返事しかしてこなかった。




これから給食と昼休みをはさんで、午後からは各教室の展示物の見学。


自由に行動していいことになっているから、適当にぶらぶらして時間をつぶそう。


そう提案すると、アリィも同意してくれた。




しかし、昼休みも終わりかけたころ。


『生徒のみなさんに連絡です。午後から自由行動が予定されていましたが、変更します。

先生の指示が出るまで、教室で待機していてください。繰り返します……』


予期せぬ校内放送によって、私達は教室に縛りつけられることになった。


とりあえず、みんな席についてはみるけれど落ち着かない。


先生の指示、と言われたけれど、廊下を伝ってくるざわめきからして、どのクラスにも先生は現れていないようだ。


「何があったの?」


「さぁ……」


みんな顔を見合わせては首をかしげていたけれど、次第にそれにも飽きてきて、わいわいと騒ぎ始めた。


集団なんて、こんなものなのだろうか。


あれだけの準備をさせたのに、いざその成果を披露するときになって、こんなに無為な時間を作るなんて。


学校とは得てして無駄に思えるようなことばかりさせられる場所ではあるけれど、いくらなんだってこれはおかしすぎるだろう。
< 135 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop