アリィ


すごく、胸騒ぎがしていた。


「ねぇ何かおかしいよ、コレ。絶対何かあったんだって」


不安を吐き出したくてアリィに耳打ちしたけれど、アリィはお絵かきに夢中で気のない返事すらしてくれない。


カリカリカリカリ……


無心にシャ-ペンを動かす音に、私の不安は更に膨れていく。


それをあざ笑うかのように緊張感をなくしたクラスメート達は、悪乗りを加速させ、


「紙飛行機大会!」


なるものを始めた。


「いけぇ!」


私の脇をいっせいに紙飛行機が飛んでいく。


ノートの切れ端で乱雑に作られたらしいそれらは軌道が定まらなくて、行きたい方向に進めたものはほとんどいなかった。


大多数がすぐにぱらぱらと散っていった中、ふらつきながらも飛び続けている一機に、みんなの視線が集まった。


まっすぐに飛んでいたかと思うと急降下したり、はたまた上昇したり……その一挙一動に歓声があがる。


「すげー飛ぶな、あれ!」


いつ、落ちるのだろう。


行方を追っていたら、ついに紙飛行機は教室前方のドアにぶつかった。


落ちた。


そう思ったのと同時に、ドアがいきなり開いた。




そこから現れたものを見た瞬間、心臓が半分に縮んだ。




頭から真っ黒な液をしたたらせた女が、教室に入って来たのだ。




< 136 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop