アリィ
「え、どうして」
悪口大好きのアリィが乗ってこないなんて、ありえない。
明日あたり槍でも降ってくるのではないか。
動揺している私をよそに、アリィはぽつぽつとしゃべり始めた。
「だってやっぱり、髪染めたり、スカート短くしたり、メイクしたり、してみたいでしょ?
だから、それを堂々とやってるカナエちゃんたちって、うらやましくない?
女子高生みたいで、カッコイイっていうか……」
いつになく歯切れ悪く話すその姿を見て、これがアリィの真剣な想いであることを悟る。
いつも考えなしにしゃべるアリィには、思いやりや遠慮がない。
それが、私の様子をうかがいながら意見している、人の目を気にしているということは、
これは、めずらしくいろいろと考えを巡らせた結果の、きっとひそかな真意に違いない。
やめてよ!と頭ごなしに否定したかった。
めったに使わない頭を使ったかと思えば、なんて馬鹿らしいことを。
悪ぶって何になる。
反抗するのなど子供じみていて格好悪いだけじゃないか。
たしかに、私だって女の子だから化粧やオシャレに憧れを抱かないわけじゃない。
でもまだ実行するには早いと思う。
年相応をわきまえることは大切だ。