アリィ
それに、私みたいに家庭が完璧でない子供が非行に走ったりすれば、「ああ、親がいないから寂しいのね」なんて具合で同情されるか、
「親がいないからって特別扱いしてもらえると甘ったれているんだ」と白い目で見られるか、どちらかだ。
きっと目立てば目立つほど惨めになるだけ。
だからあくまで『地味』に徹しようと決めている私が、『派手』の模範例のようなカナエたちをどうして肯定できようか。
「……そんなの、高校に行ってからすればいいじゃない」
怒鳴らないようにと精一杯我を抑えた結果、想像以上に低くなった声でつぶやくと、アリィは「そうだけど……」と、口ごもった。
普段はあんなにわがままなくせに、いざとなるとこいつはヘタレになるらしい。
面倒な人間。
それでもやはりアリィはアリィ、しつこく食い下がってきた。
「でも、カナエちゃんたちのことうらやましい気持ち、ゆっぴーも少しは分かってくれるでしょ?」
憧れは相当強いらしい。
ここで首を横に振れば話は厄介になるだけだと判断した私は、不本意ながらもうなずくしかなかった。
私の胸の内など知らないアリィは、理解してもらえたと勘違いして満足そうに笑った。