アリィ


「ちょっと黙ってくれる」


自分でも驚くほど冷たい声が出て、さすがのアリィもひくっと口角を引きつらせた。


「え、どうしたのゆっぴー。え、チョーこわいんだけど、えっと」


アリィはとてつもない鈍感だが、状況に気づくことができれば小心者だ、というのは先日の一件で判明している。

語尾はみるみるしぼんで、机に突っ伏した私にそれ以上は何も言ってこなかった。




それから授業中もしばしばこちらをうかがっているようだったけれど、休み時間のたびにトイレへ誘ってくることもなくて、

ただ私が必要にかられてトイレへ向かえば、その後ろを気色悪いひよこ走りでついて来た。


そして、そこで久しぶりに口を開いた。


「ねえ、ゆっぴー具合悪いの?」


この前カナエたちに向けたのと同じくらいの甘ったれた声。


ご機嫌を取っているのだとすれば逆効果だ、その媚びた視線、腹が立つ。


わずらわしいものを振り払うかのように、私はトイレの個室へと入った。


下着を下ろせば、ああ、血まみれだ。


昨日よりひどい。


三日目がひどいという、どこから仕入れたのか分からない噂は本当だったんだ。


でも慣れるまでは周期が一定せず出血量も不安定らしいし、明日になれば軽くなるという保証はない。


長引いたらどうしよう。


不安、不安、不安だらけで頭を抱えて、ふと外で私が出てくるのを待っているだろう存在を思い出した。




もしかして、アリィも。
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