アリィ
アリィのほうが先に始まっていたとしたら、相談してみればいいのでは。
名案だと思った。
が、すぐに却下した。
アリィなんかと、こんなデリケートな話はしたくない。
第一、今までアリィが具合悪そうにしていたことがあったか?
答えは言わずもがな、あいつはいつだって胸やけがするほど無駄に元気だ。
始まっていたのだとしても、私の気持ちなんて分かりはしないだろう。
個室から出て手を洗っていると、アリィがまとわりついてきた。
「ねえ、大丈夫?お腹痛いの?ねえ、ゆっぴー、どこか痛いの?」
私は手をふくと、今日初めてアリィとまともに向き合い、その品のない顔をじとっと見つめた。
「え、何?え?え?」
アリィは喜びとあせりをない交ぜにしたような表情で、両腕を羽根みたいにばたつかせている。
……やっぱりこいつは駄目だ。
大きなため息をひとつついて、私は歩きだした。
「えー、なんなの今の!ゆっぴーってばー!」
なぜかはしゃいでいるキンキンと耳障りな声を意識的にシャットアウトして、私は物思いにふける。
相手さえ間違わなければ、相談する、というのはやはりいいアイデアだ。
ただ、誰に相談するか……。
ぐるぐると思考をめぐらせ、泣きたくなった。
私には、友達がいないのだった。