アリィ

「今日も暑いねー。うわ、ゆっぴー汗びっしょりだ!どこかで休憩してく?」


聞かれても私は顔をゆがませていることしかできない。


黙っていると、アリィが「あぁ、重い。よいしょっと」とバッグを背負いなおした。


その拍子にキャミソールの肩ひもが片方落ちて、目がくらむほど下品なピンク色のブラジャーが露わになった。


なんなんだソレは!


鳥肌が立って体中をかきむしりたくなったが、本人はまったく気づいていない。


これが行き交う人々の目に触れるのかと思うと腹立たしく、申し訳なくもあって、

こんな女になど触りたくないけれど、しかたないので素早く服を整えてやる。


指先が湿った肌に触れて、虫唾が走った。


「やだ、肩ひも落ちちゃってた?ありがとう」


「き、気をつけなよ、女の子なんだから」


「ゴメンゴメン、ところで今からどうする?」


軽く流して済む問題じゃない。


そして、こんな格好の人間と一緒にあちこち行けるわけがない。


「どこにも行かなくていいから、早く家に行こう」


アリィの荷物をひとつ自転車に乗せてやると、私はそれを押しながらさくさくと歩き始めた。


「待ってよぉ。どうしてそんなに歩くの速いの?」


「私にはこれが普通なの」


もう、気が気じゃなかった。


はじめからこんな調子じゃ、先が思いやられる。

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