アリィ
暑い、暑い、と汗をぬぐいつつ、時計を確認する。
……約束は何時だったか。
自分から言い出しておきながら遅刻するとは、人間として最低だ。
帰ってやろうか。
そう思っていたら、苦い思い出のある反対車線のドラッグストア前から、
横断歩道を極度の内股で渡ってくる大荷物の女を見つけた。
それがだんだん近づいてくるにつれ、私は悲鳴をあげそうになった。
「ゆっぴー、おまたせぇ」
パンツが見えそうなほどのミニスカートにフリルのキャミソール。
初めて見る私服のアリィは、露出狂か痴女とでも言いたくなる風貌だった。
発育しきれていない貧相な体に、そのファッションはあまりにも不釣り合い。
しかも旅行用の大きなバッグをふたつも持っているから余計に目立っている。
たった二泊三日だというのに、何をそんなに持ってくるものがあったのだろう。