アリィ

見ていたくなくて、なんとかやめさせようと、私は声高に言った。


「アリィ、ところで宿題は?」


そう、このお泊まり会の主な目的は、宿題を片づけることだったはずだ。


アリィは髪を大袈裟になびかせて、こちらを振り返った。


それは美少女がやれば胸ときめく仕草だろうが、不細工がやったって人の気を逆なでするだけだ、

なんてことは今に始まったことではないので無視するとして。


自信満々、満面の笑みでアリィは言った。


「もう、全然」


OK、大丈夫、とでもいうのだろうと思った。


そう続いて当たり前の雰囲気を醸し出していたくせに。




「やってないよ」




やってない。


もう、全然、やってない。


それなのにいっさいあせりのないその表情を見て、私は悟った。


コイツ、完全に私をアテにしていたんだ。




「ええ、ゆっぴー全部終わってるの?すごーい!じゃあ見せて」




わざとらしいおねだり声。


消え失せてしまえよ!


叫ぶ気力もなくて、私はその場に脱力した。
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