愛してあげる!
『昨日ダイエットあんましてないからランニング行くの。
あんたもサッカー部なら付き合いなさいよね』
おまけにカーテンまで開けられては起きないわけにはいかない。
そうして『昨日ダイエット出来なかったのは拓巳も無関係じゃないのよ』なんて良く訳の分からない理屈によって、
強引にたたき起こされた俺は妃那とともに朝から1時間のランニングをしたのだった。
(・・・改めて説明すると、本当に自慢出来やしないな、これ)
「へぇ、拓巳がランニングなんて珍しいね」
突然後ろから聞き慣れた声がした。
太陽で焼けた柔らかなさらさらの髪をワックスもつけずに風にたなびかせる男。
その柔らかな笑顔は天使のようで、声もなじみやすいテノールだ。
田原 海斗(たはら かいと)。
中学校からの同級生で、俺の一番の親友だ。
「海斗・・・」
「どうせ、妃那に付き合わされたんでしょ?」
お前なら分かってくれるだろ?そんな希望の目を向けると、
海斗はちょっと困ったように微笑んで俺の耳元で小さくそう言った。
そう、海斗は数少ない妃那の本性を知る人物。
(数少ない、というより2人しかいないというのが正しい)
(ちなみにもう一人は海斗の双子の妹で、名前は夏乃(なつの)。今は妃那と同じ学校だ)
まぁそんなわけで、実際分かってくれた親友に俺は歓喜した。
が。
「まぁ、最近拓巳気抜けてたし、ちょうどいいんじゃない?
さすがに朝からランニングしたら自分の体力の劣化に気付いたでしょ?
妃那に感謝してもいいくらいだと思うけど」
なんて。
相変わらずの本心を読めない笑顔を浮かべながら毒を吐く海斗に少しばかり心臓を抉られた。
しかも図星だったりするものだから、俺は言葉に詰まるしかない。
「───お前どっちの味方なんだよ」