私の兄は、アイドルです。
──正直、今日1日ドキドキしっぱなしだった。
いや、正確に言うと……ハラハラ、かな?
学校にいる時なんて、澪達に
『今日の音遠、挙動不審だよ?』
なんて言われちゃったしさ……
だってさ!?
だってさ!?
今日からイキナリ働くなんてさ!?
早すぎて心の準備出来てないし!
──そんな私は、学校を無事終えて
今お兄ちゃんの事務所の前に来ています……
んで……
どうやって入ればいいの……?
目の前には、バカでかい立派なビル。
そして……入り口にはガードマンが2人。
意を決して、私は入り口に近付いた。
「あの……中に入ってもいいですか?」
「あ、新人タレントさんですか?」
恐る恐る話し掛けた私に、ニコニコと微笑んだガードマン。
いやいや、私みたいなミジンコがタレントな訳ないじゃんか……
「えっ?違いますけど……」
手を振り否定すると
「スミマセン、顔立ちが良いからてっきり……
ここから先は関係者以外立ち入り禁止です。
お帰り下さい」
やんわりと、拒否られました。