私の兄は、アイドルです。
「あのっ、私……今日から『BIG4』のコンサートスタッフとして働くんですけど……」
「身分証と通行証は?」
えっ!
身分証と通行証!?
「え……無いです…」
そういえば無い!
お兄ちゃんってば、話つけといてくれなかったの!?
慌てる私を流し見たガードマンは
「はぁ……またか……
ファンの方はお引き取り下さい」
「はぁっ?」
でっかい溜め息を吐いたガードマンに綺麗に追い返された。
ウフフ……
私、ファンに間違えられてるんだね?
……クソ兄め……!
自分から言ってきたくせに……
通行証くらい渡しとけっつーの!
私はその場で地団駄を踏んだ。
もーお兄ちゃんウザすぎる!!
私は絶っっ対に『BIG4』のファンじゃないから!!
ムカついた私は、
いっそもう帰ろうと思い体を反転した。
するとその時……
キィッ
入り口に、黒塗りのバンが停まった。
芸能人かな?
ふと足を止めた私の前に
車から1人出てきたんだけど……
「あ……音遠だ……」
「?え?」