私の兄は、アイドルです。
「……っと、悪い音遠。
渡さんから電話だ」
そう言って春さんは、
携帯電話片手に人が少ない場所へと歩いていった。
残された私は、
キョロっと辺りを見渡した。
ナオトのうちわに缶バッジ、タオルにペンライト……
ありとあらゆる物を持った女の子達が
ワクワクした顔で群れていて、
お兄ちゃんの人気の高さが伺える。
凄いな……
……こんな光景を見てると……
……やっぱり、お兄ちゃんが遠い存在な感じがしてくるや……
チクチク痛む心。
いつもの事だよ、
仕方ないもん。
分かってるもん。
私だけのお兄ちゃんじゃないって事を。
ポケットに手を入れ
お兄ちゃんが置いていった“ある物”を
ギュッと握り締め……
少ししょんぼりしてしまう。
と、その時。
「あれ?音遠?」
突然私に掛けられた声。
聞き覚えのあるその声の方へ向かって
ゆっくりと振り向くと……
「っ、……澪!」
いつも以上に着飾った、
澪がいたんだ……
「へぇ、やっぱりアンタも来てたんだ?」
腕を組みながら、
上から目線で澪が言うから。