私の兄は、アイドルです。
 



「あ……悪ィ……」



丁度、倒れた私の上にお兄ちゃんがのっかかるような状況になってて。


って……普通逆だろ!


突っ込もうと思ったけど、お兄ちゃんの手が私の腰を支えてくれたおかげで強打せずに済んだから

私は、何も言わなかったんだ。



でも……



「ぇ……?」


あ、れ……?

「お兄、ちゃん……?」


一体……どうしたの?

何だか……顔が……
近付いてくるような……



戸惑う私を

「音遠……」


何だか切なげに呼んだお兄ちゃん。




そして



──ゆっくりと、私の唇にお兄ちゃんの唇が……


降ってきそうになった。




「………」



……キス直前、残り1センチの距離で止まったお兄ちゃん。



や……ばい……。

お兄ちゃんの息が……
唇に当たる。



……ドキン……




「音遠……」


お兄ちゃんの声が、鼓膜に……唇に響く。




……ドキン……



どうしよう……

どうしたら、いいの……?




「……おにい、ちゃん……?」



いつもと様子が違いすぎるお兄ちゃんに、恐る恐る話し掛けると



 
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