魔念村殺人事件
 やっぱり。他の五人も峠に入る前に寄ったのか。

 陸と春樹は顔を見合わせると、食料を物色した。夏なのでなるべく腐らないような物を選び、水やお茶のペットボトルもたくさん買い込んだ。魔念村には店などあるはずもないので、念のためたくさん買おうと春樹が提案したのである。

 レジを済ませる時、何故だかおじさんが怪訝な顔をして、陸と春樹の顔を交互に見た。


「若者がさっきからたくさん食料を買い込んでいくけれども、一体何処行くのかね?」


「魔念村です。僕らは魔念村出身なので、今から行くんです」


 春樹が答えると、おじさんは目を見開き驚いている様子だった。


「ま、魔念村へ? しかし魔念村は去年廃村になってから、そのままの状態だと思うが……。気をつけなさいよ。峠を越える時にケムンドウに捕まらないように」


 おじさんは震えているのだろうか、肩が小刻みに揺れている。どうやらケムンドウのことを知っているようだった。この辺の人達も、ケムンドウを恐れているのか。

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