魔念村殺人事件
 電気がないため、午後六時を過ぎ、公民館の室内は薄暗く不気味だった。

 ぞろぞろと部屋を出ると玄関に向かい、その際、ギシギシと床が鳴り、今にも床が抜けそうだった。

 それぞれ車に乗り込むと、三台の車は道なりにくねくねと村の中を進んだ。民家がまばらに何軒かあり、向かって左に一軒、そこで一台車が止まった。斜めになった表札には堀井と書いてあるのが車から見えた。どうやら堀井章吾と鈴音の家だったのだろう。

 車は更に少し進み、右側で止まった。


「俺の家だったところはここだ」


 ここが春樹の家か。

 もう一台の車は更に真っ直ぐ進んで左にカーブして見えなくなった。


「瑞穂さん家はもっと先にあるのか?」


「いや、カーブを曲がったところだよ。家埃すごいと思うけど入ろう」


 車を停めると、陸はかつて春樹が住んでいた家を眺めた。

 やはり軒先には鴉の嘴に見立てたお守りがぶら下げられており、家は木造の平屋だった。来る時に見かけた家は全て平屋だったし、唯一この村で三階建てなのは公民館だけなのか。そして、どの家も老朽化しているし、築年数は相当な物だろう。

 春樹は玄関の引き戸に力を込めて開けた。

 ガタガタと音を出し開かれ、室内が薄っすらと見えた。

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