魔念村殺人事件
「暗いから足元気をつけろよ。引き出しに蝋燭があるはずだから」


 春樹はそう云って、暗い室内に入っていった。やはり暗くても自分が住んでいた家だから分かるのだろう。陸は玄関に入ったところで待っていたが、やがて室内に弱々しい灯りが点り、春樹の顔が見えた。


「陸いいぞ。入ってこいよ」


「お邪魔します」


 小さい声でそう云うと、陸は春樹に倣って靴のまま室内に入った。入るとすぐ目の前にお茶の間だったらしき部屋があり、その真ん中にはちゃぶ台が置かれ、その上にローソクが点っていた。

 そしてちゃぶ台の向こう側に春樹の顔がよく見えた。


「見て分かる通り、ここがお茶の間さ。左側が元の俺の部屋、右側の部屋は両親の部屋だった。そんで、この奥が台所、左に曲がるとトイレと風呂。右に曲がるとじいちゃんの部屋。もっとも、じいちゃんは俺が小学校の頃亡くなって、両親は村が廃村になる少し前に引っ越したんだ。今は『山岸商店』からそう遠くない町にいる」

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