魔念村殺人事件
「堀井家と黒田家の家族も、春樹の両親みたいにK県に引っ越したのか?」


「いや、堀井家の両親は俺の両親と同じ地域に住んでるが、黒田家は廃村になる何年も前に、ばあさんが亡くなっているから」


「瑞穂さんの両親は?」


「瑞穂の両親は瑞穂が小さい時に自殺したんだ。ノイローゼ気味だった母親が、父親を道連れにして。だから瑞穂はばあさんに育てられたんだ。そのばあさんも瑞穂が中学三年の時に亡くなったよ。でも美紀の両親も早くに亡くなったから、瑞穂のばあさんが当時十〇歳だった美紀を引き取ったんだが、瑞穂のばあさんが亡くなってからは瑞穂と美紀の二人暮らしだった。でも瑞穂が一八歳で東京に出ると、黒田家には美紀だけが残ったんだ」


「そうだったのか。美紀ちゃんは独りで住んでたんだな。寂しかっただろうに。真優ちゃんと正信君の家族は?」


「美紀はそれでも俺達がいるから大丈夫って笑っていたよ。真優と正信の両親は健在で、現在はやはりK県に住んでいる。この村を出た人は殆ど、K県の『山岸商店』の近くに住んでいるんだ。きっと少しでも、魔念村の近くにいたいって気持ちが働いたのかもしれないな」


 春樹は感慨深げに目を伏せた。

 廃墟に変わり果てた家の外からは雨音が聴こえ、夜は刻々と迫っていた。
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