魔念村殺人事件
 春樹は懐かしそうに室内を見渡していた。

 陸もちゃぶ台の前で腰を下ろすと、ふと気になったことを訊いた。


「なぁ、俺達の布団あるのか? それにしても蒸し暑いなぁ」


「そうだ、確認しなきゃな。暑いのに俺達は慣れてるけれど、陸は相当暑いんだろうな」


 春樹は苦笑しながら立ち上がると、テーブルにあるもう一つの新しいローソクに火を点けた。

 ローソクの灯りを頼りに左側の部屋に行くと、押入れの扉を開けているようだった。

 そして布団を引っ張り出すと下に降ろした。


「うわ、かび臭いな。仕方ないか」


 顔をしかめながらそう云うとお茶の間に戻ってきた。


「寝れればいいさ。他の人達の家だって同じだろうな」


「多分な。それに堀井家と黒田家も家の広さは皆同じくらいなんだ。でも黒田家がこの辺じゃ一番広いから三人でも十分ゆったりだろうな」
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