魔念村殺人事件
「驚いたな。それで、春樹の返事はどうだったんだ?」


「ああ、中三の時は既に俺は美紀が好きだったから断った。高校一年になって、俺は美紀に告白して付き合うようになったんだ。だから十八歳で村を出る前の日に鈴音に告白された時も、もちろん断ったよ。それから何ヶ月か前、鈴音や真優や瑞穂も東京に住んでいるから、たまに会うんだが、居酒屋で真優と瑞穂が先に帰った後、鈴音と二人で飲んでいる時に告白されたが断ったよ。酒も入ってたし、鈴音は酔ってたから覚えてないかもしれないけれど」


「そうだったのか。お前鈴音ちゃんとは付き合う気ないんだな」


「俺は今でも美紀が忘れられないんだ。未練たらしい男だと思うだろ。でもな、行方不明っていうのは生死も分からないだろ? だから期待してしまうんだよ。もしかしたら帰ってくるかもしれないってさ」


 春樹の悲しい微笑に陸は胸が痛んだ。

 確かに、死んだと分かれば気持ちの持ち方だって変わるだろう。こんなふうに生死不明じゃ、春樹はこの先一歩も前え進めないじゃないか。そんな時に、ケムンドウからの手紙か……。

 陸はお茶を飲み干すと、鈴音と美紀の話しを訊いた。

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