魔念村殺人事件
「瑞穂さん、玄関以外の出入り口ってありますか?」


 瑞穂は黙って首を振った。

 玄関以外の出入り口がないということは、間違いなく玄関から出ていったのだろう。では彼女はどこへ行ったのだろうか。

 その時、章吾が声を震わせ口を開いた。 


「ケムンドウに連れて行かれたなんてことないよな?」


 一斉に、ここにいる者達の視線が章吾に集中した。


「お兄ちゃん、それはないと思う。だって黒田家だってお守りをぶら下げているんだし」


 お守りか……。そういう解釈をするんだなぁ。俺はてっきりケムンドウの不在を理由に否定して考えていたのだけれども。待てよ、昨日公民館で見たあのわらべ唄……。もしかして! まさか……。


「村で一番大きな木って、この村の何処にありますか?」


 陸が早口でそう訊くと、ここにいる全員は揃って首を傾げ、不思議そうな顔をしたのである。

 すると、春樹がようやく答えた。


「一番大きな木は、公民館の裏手のガジュマルの木かなぁ。でも何で木なんだ? あっ! もしかして!」


 春樹も昨日の手紙を思い出したようだった。

 その証拠に春樹は慌てて立ち上がると、皆に向かって簡単に説明したのである。


「手紙だよ、手紙。昨日の手紙に書いてあった。わらべ唄だよ。とにかく行こう」

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