魔念村殺人事件
 陸と春樹は真っ先に玄関を飛び出し車に乗り込んだ。章吾達はまだ理解していないかもしれないが、後から来るだろう。

 車を急発進すると、すぐに公民館の前に着いた。

 そして急いで車から降りると、春樹が公民館の脇を指さした。


「あっちだ。あそこから裏手に回るとガジュマルの大きな木がある」


 陸と春樹は雨の中全力疾走で走った。公民館の裏手には、大きなガジュマルの木が確かにあり、木に背をもたれるようにして座っている黒いマントを着た人物がいた。


「真優!」


 近づくと、それは真優だと分かった。しかしもう真優は死んでいたのである。黒いマントのような物を身体に羽織り、胸には玄関の軒先にぶら下げる鴉の嘴を真似たお守りが深く刺さっていた。そして木の下は赤く、地面にたくさんの血が流れたことが分かる。まさにわらべ唄の通りだった。


『鴉の嘴我が胸に、見上げた空は涙降る。大きな木の下ごらんよ。誰が座っているのだろう』


 わらべ唄の歌詞、そのままじゃないか――。

 陸は呆然とその光景を見て立ちつくしていると、春樹は大声で「真優、真優」と何度も名前を呼びながら真優の亡骸を抱きしめていた。
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