10年後の君へ
翌日早朝、仕事に行く準備を済ませ、まだ寝ている妻の寝顔を横目に玄関を出る。

外はまだ薄暗く、些か肌寒い。

いつものようにポストを裏側から開けると

いつものようにどうでもいいカード会員への通知に友達の結婚式への招待状。

それから一通、宛名の無い真っ白な封筒が入っていた。

怪しげに思いながら他の物はポストに戻し、白いそれだけを持って僕は歩みを進めた。

歩きながら開いていく。

中には可愛い便箋に書かれた見覚えのある文字。

なんだか切ない気持ちにさせるその字の列に沿って目を進めていった。

そして僕は歩みを止めた。

足が動かなかった。

体から力が抜けた。

さっきまで動き回っていた目から滴が流れて止まらなかった。

読んでいく中で手紙の送り主はわかった。

それは、その人は、いや、彼女は僕が多分今まで1番愛した人。
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