イタズラ

プレゼント

今年は去年よりも寒い気がした。
智が居ないからなのか、それとも本当に寒いのか
あたしにはどっちでも同じ事だけど
雪がハラハラと舞う日が多かった。

クリスマスまで、あと1ヶ月。
半年記念日も過ぎてしまって、1年記念日もこのまま終わってしまうのかな。
仕事が休みの日は、やる事がない。
日ごろの疲れもたまっているけど、仕事以外のことは一切
やる気力が起こらないのだ。

部屋も散らかったままだし
洋服も散乱している。
それでも、明日からまた始まる仕事のことを思うと
やはり何もする気が起こらなかった。

ふと、クリスマスのCMソングがTVから聞こえて
智のクリスマスプレゼントのことを思い出したのだった。

本当に寂しい日がやってくるのを恐れて、
なるべく目の届かない場所にしまいこんでいたのだ。

しかし、あれから1年が経つのだから
もうあけてもいい頃だろうと、クローゼットにおしこめたプレゼントの箱を
必死に探したのだった。

ホコリはかぶっているけど、あの日と変わらないプレゼント。
その箱に触れると、智のぬくもりを感じた。

ゆっくりと、慎重に、緊張しながらリボンを解く。
箱についているテープをはがして
中を覗くと、そこにはウサギのぬいぐるみが入っていた。

両手で大きなハートを抱えていた。
そこのハートにはマイクの絵が描いてあって引っ張れるようになっていた。
ゆっくりとハートを引き、手を離した。


「幸、元気でいるかな?幸が今、どんな気持ちでコレを聞いているかはわからないけど
 笑顔ではないことは確かだよね。ゴメンね。寂しい想いをさせて・・・
 俺が戻るまで心変わりなんかしないで待っててな。」

1年ぶりに聞く、智の声だった。
懐かしくて、懐かしくて涙が溢れた。
でも智の声を聞いて笑顔がこぼれた。

何回も何回も繰り返して聞いた。
智。会いたい。智に会いたい。
ぬいぐるみを強く抱きしめた。すると・・・。

コロンと床に何かが落ちたのだった。
ベットのしたまで転がり、腕を伸ばしてそのモノを取ると
それは指輪だった。

しばらく見つめてから、それを左手の薬指にはめた。
サイズはピッタリだった。
智・・・。どうもありがとう。一生大事にするからね・・・。
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