先生

保健室は、興味本位で一色先生を見にきた男子生徒で溢れかえっていた。

「ちょっと、どいてよぉ」

私達は、人だかりをかき分けて保健室に入った。

机の前には、男子の輪が出来ていた。
その中心に白衣を着た女性が座っていた。


肩まである長いストレートの黒髪を一つに束ねて、メガネの奥にはクリッとした瞳がみんなを見ていた。

白衣から伸びたスラッとした足は、程よく筋肉が付いている。

私達に気づいた一色先生は、立ち上がると近づいてきた。

意外と先生が高くない様で、私と目線が同じ位だった。


私達を見ながら

「どうしたの?」

と、優しそうな笑顔で聞いてきた。


たいした用事も無い私達は、顔を見合わせながら無言の会話をしていた。


―――キーンコーンカーンコーン


珍しくナイスなタイミングでチャイムが鳴った。

その瞬間


―――バンッ!!


「お前ら、早く教室に戻れ!!!」


と言う土屋先生の声で、渋々みんな教室に帰っていった。

もちろん、私達もその波に乗って教室へと帰ったんだ。

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